夜空の琥珀
 
 ちょうど上履きに履き替えたところだった。

 城ヶ崎とかち合ったのは。


 誰もいない昇降口を横切った無愛想な横顔。

 彼も私に気づいて眉をひそめる。



「朝早いのに珍しいな。ちゃんと学校来る気になったのか?」


「俺が何しようが、関係ねぇだろ」



 素っ気ない言葉。ふいと逸れた仏頂面。

 やっぱりそう簡単に上手くはいかないか。



「……おととい」


「ん?」


「おととい、なんで先公に言わなかったんだよ」



 その問いを受け登場するのは、脳内搭載の「不良語辞典」


 ええっと「センコー」は……ああ、先生のことか。

 それでおとといって「剣道場事件」のことよね。

 先生に怒られたことが、城ヶ崎の耳にも入ったらしい。

 でも、どうしてそんなことを聞くんだろう?
 
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