夜空の琥珀
 
「で、どうして若葉が出てくるんだ」


「別に。お前が編入生可愛がってるって聞いたからな、顔を拝んでやっただけ」


「可愛がる?」



 ちょっと待ってね、不良語で「可愛がる」は――ああそうだ。「リンチ」と同意義語だ、って。



「んなわけあるか――っ!」



 勘違いもここまでくるとタチが悪い。


 若葉くんをひどい目に遭わせてる? 私が?

 それはないない断じて違う!


 第一、私と若葉くんはお友達なんだから、そんなこと絶対ないって……言いたいけど言えない!

 私たちの素顔は秘密なのだ。

 ああじれったい!



「あのな、他人の話をうのみにするほど俺はバカじゃねえ」


「じゃあ何だって言うんだ」


「確かなのは、あの編入生が、紅林に話しかける命知らずなヤツだってことだ」


「……ちょっと待て。なぜお前がそんなことを知っているんだ」



 ふと湧いた疑問をぶつければ、妙な沈黙が流れる。
 
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