課長さんはイジワル2
「押尾、引き合い。320回(←国債の番号)、客の取り20億。レートくれ」


押尾さんが慌てて板を見に席に戻る。


「愛……」

「はい!」


急に名前を呼ばれて、背筋がシャンとなる。


「今日、うちに来れる?」

「……はい」


課長が一瞬、ちらっと私を見て、バッグから取り出したマンションの鍵を本の下に隠して、本ごと私の目の前に滑らせる。


「押尾ーーー!早くレート寄こせよ!」

「引けの1毛5糸強(いちもうごしづよ)で」

「じゃ、それで決め!」

周りに気をつけながら、私は急いで鍵を回収する。


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