課長さんはイジワル2
「でも、佐久間のやつさ、俺たちの半年遅れで入ってきたのに、異例のスピードで出世したもんだから、周りからの反発も凄かったよな」


押尾さんがしみじみと語りながら、小さなお猪口に梅酒を注ぎ、段々に重ねていく。


「えっ?!半年遅れって……」

「あれ?愛ちゃん知らなかったの?」


押尾さんの質問にフルフルと首を横に振る。


「あいつ、K大の理工学部を出た後、しばらく、製薬会社に勤めてたみたいだよ?
でも、辞めてうちに来たらしい。
詳しい経緯は知らないけど、澤村社長直々の人事だったみたいで……」


「へぇ~……。そうだったんですか」


澤村社長と言うと、奥田さんのお父さんだ。


「でも実際、やらせてみたら、すごく仕事が出来たからしまいにはみんな黙っちゃって……。
上司の奥田さんもあいつには一目置いて、好きにさせてたしね。
それに、今や、あいつだけじゃない?
トレーダーであんだけ儲け出せるの」


梅酒タワーが10段になってる。


こんだけ積めるのは押尾さんだけかも。


無駄にすごい特技だ。




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