課長さんはイジワル2
「でも、まだ佐久間がいるし……」


押尾さんがチラッと見ると、課長が黒手帳をパタンと閉じる。


「まぁ、俺はしばらくは、澤村証券の敗戦処理で残るから……。1年は会社にいるかな?」


あれから、澤村社長が課長を見舞いに何度か来てくれて、課長を刺したのが、澤村証券の株を買って大損した株主であることを教えてくれた。


犯人はもう捕まったらしいけど……。


「すまなかった、要君。本当にすまなかった」


何度も深く頭を下げる社長の姿が思い出される。


この1ヶ月でずいぶん、澤村社長もやつれてた。


そんな社長を助けたいから、課長は残ることを決断したんだ。



星の数ほど殺到するヘッドハンティングの転職の勧誘を断って……。


「いんじゃね?ゆっくりしたら?

お前、今まで働きすぎだったもん。

おい、お前たち!行くぞ!」



押尾さんがコートを手にする。



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