課長さんはイジワル2
翌朝。

課長の荷物を、運転手さんに手伝ってもらいながらタクシーのトランクに詰め込む。


「じゃ、後で家で会おう」


課長がタクシーの後部座席に乗り込むと、私も反対側のドアを開けてタクシーに乗り込む。


「愛?電車で行くんじゃ……」

「ううん。一緒に乗ってく」


課長が心配そうに私を覗き込む。


「電車で行った方がいい。また発作を起こしたら……」

「薬があるから大丈夫」


吸入器を課長に見せると「出してください」と運転手に告げる。


「愛……?」



大丈夫。



発作なんか起こしたって、この間みたいに対処できるはず。



そんなことよりも、今は一時だって課長と離れてなんかいたくない。


課長に体をぴたっと寄せて、手を強く握り締める。



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