課長さんはイジワル2
『運転免許、取らないか?』
課長のあの言葉、今なら少し分かる。
運命はいつだって自分の手の中にある。
自分の人生をコントロールするのは自分なんだ。
そして、もうひとつ分かった。
逆走車が目前に迫った時、ノリは躊躇することなくハンドルを左に切ったと、後で現場検証をした警察官から聞いた。
躊躇することなく、ノリは自分の命を盾にして私を守ってくれたんだ。
あの時は、その言葉の意味すら混乱する頭では理解することが出来なかったけど、今なら分かる。
ノリがどんなに私を愛してくれていたか……。
だから、私は……。
もう、前を向いて進まなきゃいけないんだ。
タクシーの中、課長の腕に掴まりながら、心配そうな課長の顔が覗き込むのが見える。