課長さんはイジワル2
躊躇しながらも、恐る恐る両手で黒手帳を開く。

「な、何これ?!」

黒手帳にびっしりと書かれた文字にびっくりする。



ううん。


正確にはその文字自体。



「課長!これっ?!」



開いたページを課長に見せる。



「ああ。それは、アラビア語だな。で、その右下が、キリル(ロシア)文字。

そっちがスウェーデンで、ああ、それは……フランス語」

「な、何で……」

「言っただろう。父親……父さんが『死の商人』だったって。

昔、父さんの相棒が数をごまかしたり、武器を間引いて敵に転売したりしたことがバレて、中東での交渉のとき射殺されたんだ。

父さんもその不正に加担したんだろうと、殺されかけたと聞いた」


「それとこの文字とどう関係が……」


「父さんは、その後しばらく身を潜めてたらしい。

俺たち母子も1~3年ごとに国を変えて、身を隠してたんだ。

父さんへの報復に誘拐されたり、殺される危険性があったから……」


誘拐……。

殺される……。


そんなことをサラッと答えちゃう課長に驚く。


「今は……大丈夫なの?その……今も追われてたりするんじゃないの?」

「ああ……」


私の心配をよそに課長ってば笑ってる。




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