課長さんはイジワル2
「則夫がよぉゆうとったさ。
『愛はべっぴんさんになるけん。いつかおいが嫁に迎えるけん!』ってさ」


「ノリが?」


「そうさぁ~。分ばわきまえろっちゅーたさ。
『鄙にも稀なべっぴんさんの愛ちゃんとあんたとじゃ、月とスッポンじゃ』ゆうて。
昔っからあン子は手に入らんもんばぁっかし追い駆けて……
追い駆けて……
しまいにゃ手に入らんうちに死んで……
バカたれたい」


「おばちゃん……」


おばちゃんがスンと鼻をすすり、空を仰ぐ。


「……いや、バカたれはうちたいね。
あがん早よう天に召されるち知っとったら、あがんこと、言わんきゃ良かったさ……」


あがんこと?

歩き始めたおばちゃんの歩調に合わせて隣を歩く。


「成功するかどうかも分からんロクスタァ目指して東京行くって則夫がゆうたとき、うちは大反対したさ……」


「それは、どこの親だって……」


「違う。本当はそがん理由じゃなか」


「おばちゃん?」


「あの子にゆうたと。
『こがん手のかかるばぁさんの世話ば私一人に押し付けて、あんただけこん家から出て好きなことばしに東京に行くとか?
そがん、お前は薄情モンか』……って。
事故の前の晩のことさ」



私の足が止まる。




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