課長さんはイジワル2
何度も心の中で思ってた。


『もしあの時、ノリに車に乗せてって言ってなければ、あの道を通ることはなかったのに……』


夢の中で私は何度も車に乗って、そして何度もあの事故に遭遇する。


救えなかった命は、どんなに後悔しても戻ってはくれなくて、



『もし……』

『あのとき……』



という想いはあれからもずっと付きまとって来る。



「愛ちゃんも、すまんかったね。
あんたの足……あんたの人生までめちゃくちゃにしてしもうて……」


私の腕の中でおばちゃんがか細い声で泣く。

おばちゃん、小さくなった。


昔は、『大きいおばちゃん』って呼んでよくお家にお邪魔した。


ところどころに見える白髪がそのままおばちゃんの苦労を物語っていた。



そうか……。

私、今、なんとなく分かったような気がする。

なんで、こうして独り、生き残ったのか。


そうなんだね?ノリ。


ノリはおばちゃんもおばあちゃんのことも大好きだったもんね。

こんな生き方、ノリは望んでなんかいないよね。


だから、今、あの日、車の中でノリから聞いたこと私がちゃんと伝えるね。

いいよね?






< 451 / 522 >

この作品をシェア

pagetop