課長さんはイジワル2
「さっき、NORIさんと君が事故に遭った現場に行ってきたよ」


じゃ、あの現場にあった花は安田だったの?


顔を上げると、私をじっと見つめていた安田と目が合い、慌てて顔を下に向ける。

「この町はいいところだよね。
それに、あんなにのどかで見通しのいい場所で事故があったなんて信じられなかった。
本当に不運だったと思う。
俺は当事者じゃないから、君の気持ちの全てを理解することなんて出来ない。
けど……でも、もし、俺がNORIさんの立場だったら、手術して欲しいと願うと思う」


「安田……」


「俺さ……野山証券、断ろうと思うんだ」


安田の爆弾発言に、目が飛び出そうになる。


「なっ、なんで?あんなに大手なのに?!」

「もう一度、NORIさんと一緒に見た夢に向かってチャレンジしてみようと思う」


安田の真っ直ぐで澄んだ瞳が私を見つめる。


「実は、もう親は説得済み。
野山証券から、何度も来てくれって言われてたんだけど……
ここに来て迷いが吹っ切れた」


安田の思い切った決断に驚いたけど、何よりも、今まで見たこともない彼の瞳の輝きに圧倒される。


「実のところ、未来なんて分からない……。
NORIさんがこんなに早く逝くなんて誰が思った?
そして、これから先、いくら野山証券が大手だから倒産しないって誰が言い切れる?
中堅と言われた澤村証券だって倒産したんだ。
だったら、リスクを取って自分全てを賭けて夢を追い駆けてみようって思ったんだ」



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