課長さんはイジワル2
「待ってるから、東京で。
だから、そんな何もかも諦めなきゃいけないような顔なんかしてないで、手術のこと良く考えなよ」


それから、私と安田は階下へ下り、ノリの両親と少し話をして、仏間へと向かう。

一歩一歩、現実へと足を運ぶ。

先を歩くおばさんの足が襖の前で止まる。




怖い。






思わず前を歩く安田の腕を強く掴む。



襖がすぅっと開く。


「則夫、愛ちゃんが来てくれたばい。それから、ヤスちゃんも……」


大きな仏壇の上には……

黒く縁取られた額の中に微笑むノリの顔写真……





ドクン!


ドクン!


ドクン!


ドクドクドクドク……




胸の鼓動が制御不可能なスピードでどんどん加速する。



「……っ、……あっ……」



安田を掴む手が震え、足が崩れ落ちる。


息が……っ。


「どうした……?杉原さん?!」


喉を押さえながら畳に倒れこむ私を安田が抱き止める。










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