課長さんはイジワル2

第6節 それぞれの旅立ち

安田の叫ぶ声を遠くに聞きながら、意識が徐々に遠のき始める。


ああ……。

まただ。

また、あの……夢。


救いようのない絶望感がじわじわと胸に広がっていく。


そして、やっぱりあの黄色い自動車が近づいてくる。

ノリの車に向かって、無邪気に手を振っている私があそこにいる。


「お~!愛!血相変えてどこ行くとね?」

「あ!ノリ!良かったぁ~。すまんけど、車、乗せてくれんね?電車に乗り遅れそうで……」

「電車?」

「うん。今からコンテストに行くとこなんやけど……。10時58分に乗り遅れたら、次は1時間後やけん」

「そりゃ、大変じゃが……」

でも、ノリの様子がいつもと違う。

「けど……すまんな、愛。乗せちゃることはできん」

「ノリ?」

「おいも行かにゃいかんとこがあるけん」

「どこに……行くと?」

ノリは微笑んだまま、首を横に振る。

「隣町?」

「違ご」

「ん~。じゃ……まさかついに東京とか?」




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