課長さんはイジワル2
「課長……?」

「ごめん。本当にごめん。俺、愛と……一緒に、生きていくこと、できない」

「できないって……?」

「検査でSOD1遺伝子変異が認められた」

「え?エスオー……?」

「家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)の数年以内の発症の可能性は排除できないって」


体の力が抜けて崩れ落ちそうになる私の体を課長の腕が抱き留める。


「……信じない。だ……って、課長、言ったよね?
春には桜、夏には海、秋には紅葉を追い駆けて……」

「愛……」


課長が私の体をきつく抱き締めながら「ごめん」と小さく呟く。


「……っ。……嫌!嫌だよ!嘘だよね?課長!!」

「ごめん。ごめん。ごめ……」


課長の震える肩が


声が


涙が


嘘じゃないって


本当だって


言ってる。



いつか失ってしまうの?


この腕も


この温もりも


全部、なくなってしまうの?



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