課長さんはイジワル2
いやだ。

私はそんなこと信じない。

課長が刺されたと聞いたとき、ぞっとした。

永遠にこの人を失ってしまうかと思うと、気が狂いそうだった。



でも、課長は戻って来てくれた。




この腕に。



そう、あの時、確かに奇跡は起きたんだ。


だったら……


私は課長の腕をそっと解くと、深く息を吸い込む。



「……愛?」




私は、奇跡を信じてる。





あの、事故で彷徨った私の命だって、今、ここに生きていて課長に巡り合えたじゃない。


奇跡は、自分で起こすんだ。


「課長、見てて」



震える息を小さく長く吐き出すと、耳の中で音楽が鳴り出す。


確かめるように滑り出す『アイソレーション』

静かに踏み出す『スネーク』のステップ。


そして、徐々に体が音楽になる。


今の体じゃ踊る意味なんてないと思ってた。


賞を獲って

都会に出て

ダンスをして

みんなに認めてもらいたいって思ってた。






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