課長さんはイジワル2
「そ、そうだよな。ごめん!ごめん!なんか、しんみりしちゃって。
今日はお前と愛ちゃんの大事な武道館コンサートだったのに……」


気を取り直した押尾さんたちと一緒に安田の車に乗り込み、武道館に到着する。


広い!



ここで、これからコンサートをするんだ。


体がぶるっと身震いする。


安田が歌い、私率いるダンサーたちがこの武道館で踊る。

その開園が8時間後に迫っている。

もう、到着しているスタッフもいる。

教え子のダンサーたち数人が私に気づき、駆け寄って来る。


「おはようございます!愛先生!」

「おはよう。早いね」

「だって、ドキドキし過ぎちゃって、居ても立っても居られなくて、来ちゃいました」


まだチームに入りたての一番若い女の子が、胸に手を当て、顔を高揚させてる。


私にもこんな時があったっけ……。


しみじみ思い出しながら微笑んでいると、安田に肩を叩かれる。


「最終打ち合わせをするから、控室に来て」

「あ、うん」


安田の後に続こうとして、教え子の女の子たちが私の服の裾を掴み、取り囲む。


「あの……。愛先生は……本当に聡(さとし)さんとは付き合ってないんですか?」

「えっ?」

「だって、仲良さそうにいつも一緒に行動してるし。それに……すごく雰囲気、いいし」

「だから、いつも言ってるけど、『親友』だから、安田は」

「でも……」

納得いかなさそうに女の子たちが上目遣いで私を見る。



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