課長さんはイジワル2
「あ……。ごめん。みんなでフォーメーションとか確認してて」


泣きそうになる顔を背け、安田の待つ控室に走る。

課長の手も

声も

瞳も

何も……

何ひとつ……

私は忘れてなんかない!

私の全てを

命をかけて愛した人……




5年経った今でも課長を愛してる。

課長を求めてる。


課長!

課長!!

課長!!!

お願い。

帰って来て!

私……

私、ずっと待ってるんだよ?

課長が帰って来てくれるって……

そう思って、ずっと待ってるんだよ?

まさか……

ALSを発症して連絡が取れないとか……。

もしかして……


死……。



ううん!

違う!

そんなことない!

課長は私を置いて、逝ってしまったりしない!!




歯を食いしばり、全力で廊下を走る。




……だめ。

いけない。

こんな乱れた感情のまま、ステージに立っちゃ。



走るのを止め、深呼吸をして、安田の控室のドアをノックする。


返事がない。

もう一回、ノックしたけど、やっぱり返事がない。

安田、先に来てるはずなのに……。


「安田、ごめん。遅くなって……。打ち合わせを……」


安田の控室のドアをソローリと開ける。



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