課長さんはイジワル2
急いでシートベルトを外し、車のドアを開ける。

「課長―――!!!」

だけど、町の喧騒に声がかき消されてしまうのか、一団は止まることなくどんどん進んで行ってしまう。

ああ!

行っちゃう!!

行かないで!!

お願い!!課長!気づいて!!

「……佐久間……佐久間、要ーーーーー!!!」

その時、課長が道路脇の私に気づく。

「愛……」

涙で全てが見えなくなる。

一歩駆け出した瞬間、

「愛!危ない!」

課長の叫び声が聞こえた。

あ……
ああ、課長だ。

パッパーー!!!

クラクション音の方に振り向くと、目前に迫った車の影に体がすくむ。

と、次の瞬間、飛び込んできた課長の胸に抱かれて、もつれ合うように路肩に転がっていた。

「っんの~~、ばかっっ!轢かれてたぞ!」

「…………か、っ」


課長の胸にしがみ付くのに精いっぱいで、もうそれだけで息ができないくらい胸が苦しくなって……

「……ごめん。バカは俺だよな」

課長の私を抱き締める手に力がこもる。



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