課長さんはイジワル2

課長だ。

この腕も

この胸も

ずっと還りたかった。


「課長!課長!課……。
会……っ、たかっ……っ!
っ、うっ……ぅぁぁぁうああああ!!!!」

「ごめんっ!ごめんな?!愛」

強く抱きしめてくれる課長の言葉に何度も首を振って、それでももう離れたくなくて、課長の胸を叩きながら必死にしがみ付く。


止まっていた時間が

胸の拍動が

課長の腕の中で

動き出す……











そして、今―――。

課長がマンションにいる。

リビングのダイニングテーブルで向かい合って、私の煎れたコーヒーを飲んで……
私の目の前にいて……
まるで夢でも見ているみたいだ。

所在なくコーヒーカップをいじっていると、課長が口を開く。

「免許、いつ取ったの?」

「えっ?あ、5年前」

「……5年前。そうだったんだ」




それから、また私たちはお互い無言のままコーヒーを飲む。


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