叶う。 Chapter3
「はぁ・・・リサもとんでもねぇ小娘押し付けてったもんだな。」
お父さんは溜息を吐いて、ベッドの頭上にあるシェルフに肘をついて掌で頭を支えると違う角度から私を見下ろした。
「あ・・あの、何で私はここに?」
普通なら救急車で運ばれていてもおかしくない。
「一条和也だったか、あいつが喫茶店のマスターに救急車を呼ばないように頼んでお前の携帯から俺に連絡を寄こしたんだ。あいつはお前が病院に運ばれると色々面倒だと思ったんだろうよ。知ってんだろ?」
お父さんはそう言って、面倒そうに自分の頭を指差した。
それはきっと私の人格の事を言っているのだと解釈した私は、小さく頷いた。
「あ、あの・・・お父さん?」
「・・・あ?」
「どうして、和也を・・・知っているんですか?」
「・・・・・。」
私はごくりと唾を飲み込んだ。
考えるように無言になったお父さんに、聞いてはいけないことを聞いてしまったような気がしたからだ。
お父さんは暫く考えるように眉間に皺を寄せていたけれど、何度かゆっくり瞬きすると私と視線を合わせた。
その栗色の瞳はすごく冷たくて、全く感情がこもっていないことに気付いた私は、ベッドに潜り込みたい衝動に駆られた。
だけれどそんな事は出来るはずもなく、私はお父さんの瞳をじっと見つめ返した。