叶う。 Chapter3
「隠しても無駄だろうからな、どうせあのガキが話すだろう。」
お父さんはそう言って私から視線をそらした。
私はお父さんの話が聞きたいようで、聞きたくないような不思議な気分になった。
だけれどお父さんはゆっくりと話し始めた。
「俺の家は代々、この場所で貿易会社を経営していた。繁盛してたし見りゃ分かるだろうが、金は腐るほどある。祖父の代まではそこまでじゃなかったが、俺の親父の代に代わったのが全ての始まりだった。」
お父さんはそう言うと椅子に座りなおし、膝の上で軽く手を組んで私の方を向きながら言葉を続けた。
「俺の母親は、ボスの親戚の女だった。傲慢で我侭放題な嫌なヤツだったよ。だけど俺の親父はそれで良かったんだ。そもそも金さえあればいくらだって女なんか手に入る。俺の親父が欲しかったのは、ボスの父親、つまり双子の祖父との繋がりだった。」
お父さんの言葉に、お父さんはきっと自分の両親があまり好きではなかったのだろうと感じた。
それにお父さんはやっぱりハーフだったのだと、何故かそんな事が頭を過ぎった。
「金持ちってのは不思議なもんでな、何故か勝手にそういう繋がりが出来ていくんだ。俺はまだガキだったから分からないが、親父はいつしかボスの父親と取り引きを始めてた。」
お父さんはそう言うと呆れたように息を吐き出した。