叶う。 Chapter3




「早い話が、俺も若かったしな。そんなリサを放っておけなかった。毎日顔を見てれば自然と情が湧くもんだ。気付いた時には遅かった。」


お父さんが言っている事が全く分からなくなって、私はその栗色の瞳をじっと見つめた。
さっきまで感情のなかったその瞳が、今は何故か苦しそうに歪んでいるように見えて、私は心がチクリと痛くなった。

お父さんは私から視線をそらすと、呟くようにこう言った。



「・・・・リサは俺の子供を産んだ。」



私はあまりに驚いて、思わずベッドから起き上がってしまった。



「・・・それって・・・・」



「女の子だった。俺はリサと相談して、その子を普通の子供と同じように育てようと決めた。リサはこの家に来てから表には一切顔を出さなかった。ボスは双子に夢中だったからな、俺達の間に子供が出来た事は俺の家の中にいる人間以外知らなかった。」



「・・・・・。」



「ずっと俺が一人で世話してたよ。リサが産んだとばれないようにな。赤毛のアンに似ていたからな、ミドルネームにアンナと名付けたんだ。月島結(ゆい)、お前からしたらお姉さんにあたるのか。」



お父さんはそう言って頭を抱えた。




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