叶う。 Chapter3
「俺に・・・殺せと。俺の手で殺せとな。」
私はもう泣かないと決めていたのに、何故か涙が溢れて止まらなかった。
思わず両手で口を押さえる。
叫んでしまいたいくらいの衝動に、途端に胸が苦しくなってくる。
なぜ同じ人間なのに、そんな事が出来るのか。
私には分からない。
「・・・ど・・・うし、て・・・。」
私は苦し紛れにそう声に出した。
私の声にお父さんは振り返って私の瞳を見た。
その瞳は冷たくて、何の感情も見えなかった。
「双子と母親が同じことに気がついたからだろうな。結は俺に似ていたが、ボスには分かったんだろう。俺が結を庇ったら、リサも俺も死んでただろうな。双子の母親でもあるあいつを殺させる訳にはいかなかった。それに俺が死んでもどっちにしろ双子と同じ血を引いてる結は殺されただろう。だから俺は引き金を引いた。」
お父さんは淡々とそう言って深く溜息を吐くと、また私のベッドの横に置かれた椅子に座った。
私はそんなお父さんとママが、どんな想いで過ごしてきたのかを考えると涙が止まらなかった。
そして何の罪も無い子供を、自分の手でそうしなければならなかったお父さんがどれほど辛かったのか考えるだけで胸が押し潰されそうだった。