叶う。　Chapter３




お父さんが全てを話したのは、きっと私にシオンのことを忘れさせる為なのだと気付いた。

そして“アンナ”を失いたくないと言ってくれたお父さんの気持ちを、私は無駄に出来ないと感じた。

ママも、お父さんも、私をアンナと呼ぶ度にどれだけ辛い記憶を思い出していたのか、私には想像することすら難しい。


だけれど他人である私をこんなにも大切にしてくれるのは、きっとママもお父さんもそれだけ辛いことを経験したからなんだろう。


私は“結”さんにはなれない。

だけれど私が普通に幸せに過ごすことが、ママとお父さんにとってどれだけ大切な事なのかは理解出来た。


死んでしまった人間の代わりには決してなれないけれど、その傷を少しでも癒すことはきっと出来るんだろう。

それは２人が決めたように、普通の子として幸せに生きる姿を見せることなんだろうと思う。


私は本当に子供だ。


自分だけが寂しくて、自分だけが辛いと思ってた。


だけれどそれは大きな間違いだったのかもしれない。


世界は私が想像しているよりずっと大きくて、きっと私より辛い目に合っている人は沢山いるのだ。


そう考えると、何故だか酷く心が痛んだ。


――――私は無力だ。
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