叶う。 Chapter3
「なんで医師免許なんて持ってるのかって顔してんな。」
私は一体どんな顔をしていたのだろうか、と思ったけれど何故か私の心を読み取ったお父さんに少しだけ驚いた。
「正確には医師免許はあるが、日本では医師としては働けねぇよ。だが知識があるから色んな事に対処出来る。あいつはアメリカ出身らしいが。まぁこの世界では色々な事情があるヤツが多いからな、過去の事を本人に聞いたりすんじゃねぇぞ。」
お父さんはそう言って、その目を細めて私を見た。
そんな事を言われると知りたくなってしまうけれど、それはご法度なんだろうと思う。
私にだって人に知られたくない過去がある。
みやさんもきっと色々あったんだろうと思うと、なぜか少しだけ親近感を抱いた。
「それから、大事なことだ。お前の彼氏、何だっけか?あいつにもし結のことを聞かれたら、結は母親に引き取られたと言っておけ。居場所は俺も知らないと。あいつらはリサには会ったことがないからな、それだけ伝えとけばいい。」
結という名前に心が痛くなる。
もし和也に結さんのことを聞かれたら、動揺してしまいそうな気がする。
だけれどそれはしてはいけない。
「・・・分かりました。」
私は小さくそう言って深く息を吐き出した。
お父さんはそんな私の頭を、また優しく撫でる。
その仕草が何を意味するのかは、馬鹿な私でも理解出来る。