叶う。 Chapter3
お父さんは口では色々と言うけれど、何だかんだ言ったって私を心配してくれているのだ。
これがお父さんなりの、優しさの表現の仕方なんだろうと思うとやっぱり胸が痛くなる。
何だか魚の棘が喉に刺さった時みたいに、ずっと心がチクチクと痛む。
普通じゃないこんな世界、なくなってしまえばいいのに。
「じゃあ、俺はそろそろ出掛ける。夕飯には戻るから、調子が良さそうなら降りて来い。あと、夜にあの医者が来るぞ、なるべく俺も立ち会うが、間に合わなかったら余計な事は喋るなよ。」
お父さんはそう言って椅子を立つと、俯いた私の頭の天辺にキスを落とした。
何だかママやレオンがいつもそうしてくれていた事を思い出して、私は少しだけ幸せな気分になった。
「いって・・・らっしゃい・・・。」
扉を開けるお父さんの後姿にそう声を掛けると、お父さんは振り返って一瞬だけ驚いた顔をしたけれど、直ぐにいつもの感情の無い表情になった。
「行って来る。」
だけれどお父さんはそう言ってくれたので、私は曖昧に微笑んでお父さんを見送った。
お父さんが部屋を出ると、直ぐにコンコンと扉が2回ノックされた。
「・・・・はい。」
私がそう返事をすると、扉がゆっくりと開く。