叶う。 Chapter3
/変化
―――――それから。
私はゆっくりと休養をとって、数日が経った。
世間はもう新年という事もあって、あちこちですっかりお正月ムード満載だった。
人で混み合うデパートや、子供達が楽しげにはしゃぎまわる姿が視界に入ってくる度に、何だかこっちまで楽しくなるような気分になった。
私はあの日以来、頭痛を起こす事もなく平凡な毎日を過ごしていた。
ただあのおかしな現象はまだ続いていて、私は過去の記憶をよく思い出すようになった。
それは全てが色付いていて、その記憶は間違いなくアンナの記憶なのだ。
だけれど人間とは不思議な物で、あれだけ怖かったのにこれだけ頻繁にその記憶を思い出すと次第に頭がそれに慣れていってしまう。
ふとした瞬間に思い出すその記憶の欠片を、私は毎日きちんと自分の記憶と繋ぎ合わせた。
そうすれば、例え色があったとしても私とアンナの記憶として頭に残されていく。
何故そうなってしまったのか私には分からないけれど、もうアンナの記憶を思い出すことに恐怖は感じなくなった。
むしろその記憶の欠片を繋ぎ合わせて、私が知らない過去のアンナの記憶を知ることが出来ることで、私の心には少しずつ変化が起きていた。