叶う。 Chapter3
/新しい生活
玄関にはお父さんと、知らない男の人が立っていた。
その人は多分、まだすごく若いのが見た目だけで分かった。
それにどう見てもピアノが弾けそうな雰囲気ではなかった。
髪は今時っぽくアシメントリーになっていたし、金髪に近い色をしている。
背は多分、美弥と同じくらいだろうか。
「お待たせしました。」
私がそう言うと、お父さんとその人は同時にこっちを向いて私をじっと見た。
何だかちょっと爬虫類に似ているような、そんな感じの顔をしていた。
だけれどその人は私を見てにっこり笑った。
笑うと八重歯がとっても印象的で、何だか女の子みたいに可愛らしく見えたのが不思議だった。
「初めまして。アンナさんでしたっけ?林原先生の紹介で、えっと藤崎奏(ふじさきかなで)と言います。宜しくお願いします。」
「あ、月島アンナです、こちらこそ宜しくお願いします。」
その人は見た目とは全然印象が違くって、私はとても驚いた。
何だか一瞬心配だったけれど、人懐っこい笑顔を浮かべるこの人はとてものんびりと話をするタイプの人だった。
お父さんはそんな先生があまりお気に召さなかったみたいだったのが、その顔を見ただけで分かったので、私は思わず苦笑いをした。