叶う。 Chapter3




「僕の師匠は旦那さんの方だよ。今でもよく会うからね、学校でも。」

私は先生の言葉にちょっとびっくりした。
流石に若いと思ったけれど、まだ学生なんだ。

「藤崎先生は、音大に行ってらっしゃるんですか?」

私は音楽大学という物に少し興味があったので聞いてみた。

先生は美弥の用意した椅子に浅く腰掛けると、鞄から楽譜を取り出しながらこう言った。

「うん、正確には音大はもう卒業しているんだ。今は別の音大の大学院に通ってるんだよ。」

「そうなんですね。あの、藤崎先生?」

「あー、アンナちゃん、歳も近いから奏先生って呼んでもらってもいい?なんか苗字で呼ばれなれてないから緊張するんだw」

先生はそう言ってまたあの可愛らしい笑顔で私を見た。

「はい、奏先生。音大ってどんな所なんでしょうか?」

私が奏先生と呼んだので、先生は何だか満足気ににっこりとしながら私の質問に答えてくれた。


「どんなところって、言われるとなぁ・・・自分の好きなことが学べる場所かな?他の大学と同じだよ、音大に入るには勿論努力は必要だけど、入ったら自分の好きなことが学べる。大学自体が、自分の好きなことをより詳しく学ぶ場所だからね。」


先生はそう言って、私が発表会で弾いた月光ソナタの楽譜を広げた。





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