叶う。 Chapter３

「アンナちゃん、一回これ全部弾いてみてくれる？」

私は先生が、私のレベルがどの程度なのか知りたいのだと純粋にそう思った。

「月光ソナタは、楽譜はいらないです。」

私がそう言うと先生は少し目を細めて笑った。

「そうだね。もう見飽きたくらいでしょ？じゃあ、お願いします。」

先生がそう言ったので、私も「宜しくお願いします」と言ってから、鍵盤に手を乗せた。

久々に触れたグランドピアノの鍵盤の重さと、慣れない鍵盤の硬さに私は自分の指先が全く着いていけてないことに直ぐ気がついたけれど、途中で演奏を辞めることはしたくなかった。

だけれどやっぱり第３楽章に入ると、それは完全にミスの連発で私はほんの少し練習をサボった自分に呆れて、等々我慢が出来ずに鍵盤から手を離した。


「････ごめんなさい。」


「慣れないせいもあると思うよ。気にしないで･･･。」


先生は俯く私に優しくそう言った。


「でも、アンナちゃんがピアノを続けて行きたいのなら、音大まで行きたいと思うなら、今の状態じゃ無理だよ。ピアノ専攻の高校すらも怪しい。厳しいことを言って悪いけど。」


私は先生の言葉に唇を噛み締めた。
なぜ、私はもっときちんと練習をしなかったのか後悔した。