叶う。 Chapter3
「美弥、今何時?」
玄関で先生を見送った後、私は振り返って美弥にそう尋ねた。
「7時15分です。」
夕飯まではまだもう少し時間がある。
それからもう一つ、私は決めたことがあった。
「ちょっと電話してくるね。」
私は美弥にそう告げると、階段を慌てて駆け上がった。
向かった先は自分の部屋。
私は鍵を開けて急いで部屋に入ると、机の上に置かれた携帯を手に取って、もうすっかり見慣れた番号をタッチした。
携帯を耳に当てると、直ぐにその声が聴こえてきた。
“もしもし?お疲れ、ピアノの先生どうだった?”
「もしもし、ピアノの先生若かったよ。」
“マジか、男の人?女の人?”
「どっちだと思う?」
“女の先生!”
「ざんねーん、男の先生でした。」
私がそう言って笑うと、和也もつられて笑った。
“またそうやって、心配掛けるんだ?”
「どうして?別に心配する必要ないじゃない。」
“それが心配するんだなぁ、かなうが知らない男の人と同じ部屋に2人きりなんてさ。”
「美弥がいるもん。」
“ああ、そっか。そういえばそうだねw”
相変わらず心配性の和也はそう言って笑った。
思わず私も笑顔になる。