叶う。 Chapter3




「美弥、今何時?」


玄関で先生を見送った後、私は振り返って美弥にそう尋ねた。


「7時15分です。」


夕飯まではまだもう少し時間がある。

それからもう一つ、私は決めたことがあった。


「ちょっと電話してくるね。」


私は美弥にそう告げると、階段を慌てて駆け上がった。
向かった先は自分の部屋。

私は鍵を開けて急いで部屋に入ると、机の上に置かれた携帯を手に取って、もうすっかり見慣れた番号をタッチした。

携帯を耳に当てると、直ぐにその声が聴こえてきた。


“もしもし?お疲れ、ピアノの先生どうだった?”


「もしもし、ピアノの先生若かったよ。」


“マジか、男の人?女の人?”


「どっちだと思う?」


“女の先生!”


「ざんねーん、男の先生でした。」


私がそう言って笑うと、和也もつられて笑った。


“またそうやって、心配掛けるんだ?”


「どうして?別に心配する必要ないじゃない。」


“それが心配するんだなぁ、かなうが知らない男の人と同じ部屋に2人きりなんてさ。”


「美弥がいるもん。」


“ああ、そっか。そういえばそうだねw”


相変わらず心配性の和也はそう言って笑った。
思わず私も笑顔になる。






< 144 / 240 >

この作品をシェア

pagetop