叶う。 Chapter3




私が泣き出すと、お父さんは呆れたように大きく溜息を吐きだした。


「お前はほんとに頑固なヤツだな。それにまだ気付かないのか?人間ってのは不思議なもんでな。近くに居る人間ほど、その大切さに気付かない。」


私はお父さんの言葉に、更に涙が止まらなくなった。


「近ければ近いほどな、失った時にその大切さに気付くもんだ。家族を失って気付いただろうが。そろそろいい加減素直になったらどうだ?」


お父さんの言葉に、私は俯いた。

そうだった。
私は家族を失って、気付いていたはずなのに。

自分の気持ちをどんなに誤魔化したって、良いことなんか一つもない。
それを分かっていながら、私はずっと誤魔化し続けていただけなのだ。


私はすっかりと魂が抜けたみたいな気持ちになった。
何だかんだ言っても、自分が和也のことを好きなのだと私は気付いていた。

だけれどそれを誤魔化して、和也に曖昧な態度で接していたのは私自身なのだ。

だからもう和也が別の誰かを好きになっていたって、お父さんの言う通りおかしい事じゃない。
お父さんの言う通り、和也に近寄ってくる女の子はいっぱい居るだろう。

現に私は知っている。
同級生が、何人も和也のことが好きなのだということを。
同じダンスに通う女の子に告白されたということも。

それはたまに来る凛からの連絡で知ったことだけれど、きっと間違った情報じゃない。




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