叶う。 Chapter3
私は零れる涙を袖口で拭った。
今更後悔しても遅いのだ。
そんな私をじっと見つめながら、お父さんはポケットから携帯を取り出すと、どこかに電話を掛けた。
電話は直ぐに繋がったみたいだった。
「お、生きてんのか?」
お父さんは開口一番にそう言った。
「お前のせいで、うちの娘が泣いてるんだが。ちゃんと責任とれよ。」
お父さんはそう言って、私に携帯を差し出した。
私はその携帯を受け取ると、それを耳に当てた。
「もしもし・・・。」
“かなう?ごめん、今日行けなくて!”
和也は酷く擦れた声で苦しそうだった。
「ううん、大丈夫。・・・どうしたの?」
“朝から熱で、病院行ってからずっと寝てたんだ・・・”
和也はそう言ってコンコンと咳をしていた。
声もそうだけれど、何だかとても苦しそうだった。
「大丈夫なの?」
“へーき・・・それよりどうしたの?・・・泣いてるって、おじさんが。”
自分がこんなに辛そうなのに、それでも私を気遣う言葉を掛けてくれる和也に、私は更に涙が込み上げてきた。
「うん・・・泣いてるけど、もう大丈夫。ごめんね心配掛けて。」
“いや、へーき。”
そう言いながらも苦しそうな声を聞いていると、私は居た堪れない気持ちになった。
傍に行ってあげたいと、心からそう思う自分がいる。