叶う。 Chapter３

またリビングに戻って来た私は、お父さんに連れられて家政婦さんと、使用人というか明らかにお父さんの付き人だろう人達に紹介された。

さっきまではこの部屋に居なかったから、きっと私達の話が終わるまで別の部屋に行かせてたんだと思った。


「こいつはアンナだ。俺の離婚した妻との間の子でな、今日から俺が引き取る事になった。悪いがよろしく頼む。」


家政婦さん達は、五十嵐さんとは違って少し若い人が多かった。

皆どこか冷たそうな雰囲気をしているけれど、それは多分笑顔じゃないからだと思った。


「アンナです。よろしくお願いします。」


私がそう挨拶しても、誰一人笑顔すら見せない。

だけれど皆丁寧に頭を下げて「宜しくお願い致します。お嬢様。」と小さく声に出した。



それは多分、お父さんがそういう教育というか、そういう方針でそうさせているんだろうとなんとなくそう思った。

私とは色々と話をしてくれているけれど、多分普段のお父さんはきっとすごく冷たい人なんじゃないかと思った。

それはあくまでも私の想像だけれど、双子の父親をボスと呼ぶこの人は、きっと怖い人なんだろうと思う。

それに、付き人も何人か常に居るみたいだし、きっと表の顔は貿易会社の社長でも、裏の顔は知らない方が幸せに生きられるような気がした。