叶う。 Chapter3



私はまたお父さんとソファに向かい合って座った。


「旦那様、お飲み物は?」


すると直ぐに家政婦さんの一人近づいて来てがそう聞いた。


「コーヒー。」


「かしこまりました。お嬢様は?」


お嬢様という呼ばれなれない言葉に一瞬躊躇したけれど、お父さんはそんな私を目を細めて睨む。


「お、同じ物で。」


私は慌ててそう言った。


「かしこまりました。」


家政婦さんはそう言うと、直ぐにキッチンに向かって歩いて行った。


お父さんは家政婦さんがキッチンに向かったのを確認すると、大きく溜息を吐いて小さな声でこう言った。


「お前は俺の娘だ、だからこの家でのお前の立場は俺の次に偉いという事になる。もっと堂々としていろ、俺が舐められるだろうが。」


「ご、ごめんなさい。」


私がそう言うと、お父さんの目付きが少しだけ和らいだ。



「そういえば、お前彼氏がいるらしいじゃねぇか?」


お父さんは突然思い出したかのようにそんな事を言った。


「え?・・・何で知っているんですか?」


驚いた私の顔がおかしかったのか、お父さんは口角を片方だけ上げてにっと笑った。


「色々と知ってるさ。」


その言葉に、私は途端に不安になった。

和也や凛達に、とてもじゃないけれどお父さんと関わって欲しいとは思えない。




< 16 / 240 >

この作品をシェア

pagetop