叶う。 Chapter3
「そのような苦労をしない為に、今は学ばなければならない時期なのです。だから一条様も必死に勉強されているんだと思います。」
そうなのだ。
会える時間が減ったのは、和也の塾の時間が増えたからでもあった。
それに和也はそのことをいつも謝ってくれるけれど、それでも勉強をやめる気はないようで、いつ連絡を入れても大体勉強していたと言う。
「将来を考えればこそ、今知識を詰めておかなければなりません。一条様は本当にしっかりしていらっしゃいますから、きっときちんと将来を考えているのだと思いますよ、お嬢様との将来のことを。」
美弥はそう言って優しく微笑んだ。
私は何だかイライラとしたけれど、美弥の言うとおりなんだろうと思った。
先を見ているからこそ、良い高校に進んで良い大学に入らなければいけない。
そして甘やかされて苦労知らずな私が、どれだけ世間知らずなのかを美弥に諭され身に沁みるほど反省した。
私がピアノを続けられるのにも、こうして生活出来るのも、全てお父さんがそうしてくれているからなのだ、と改めて考えさせられた。
だから私も、和也とは違うけれど自分も自分なりに、難しい学校を受けてみようという気になった。
それからは私は和也の邪魔をしないように、自分自身も必死に勉強する毎日を過ごした。