叶う。 Chapter3

/秘密の地下室





「ありがとうございました。」


玄関で美弥と一緒に先生を見送ると、私は直ぐに食事の時間なので、そのまま真っ直ぐにリビングに向かった。

ダイニングのテーブルを見ると、そこには既にお父さんが居て何やら電話で誰かと英語で話していたけれど、私が近づくと何故かいきなり私の知らない言葉で話し始めた。


私は黙ったまま、美弥の引いてくれた椅子に座るとあまり気にしないように窓の外を眺めた。

私がこの家に着てから、後数ヶ月で一年の月日が過ぎようとしていた。

庭先で咲き誇っていた黒赤色の薔薇は、もうすっかり陰を潜めてしまったけれど、その葉はまだ健在だった。
深く青々としたその葉はとても美しくて、私はたまにその場所に散歩に出掛ける。


私がぼんやりと外を眺めていると、お父さんは何だか不穏な空気を纏いながら電話を切った。

私はそんなお父さんに視線を向けたけれど、お父さんは私の方を向いてくれなかった。

少し前まで、私がプチ反抗期だった時はそんな事もあったけれど、最近のお父さんは私がきちんとやることをやっていたのでご機嫌だった。

一年近くも一緒に居ると、お父さんの機嫌の善し悪しくらいは把握出来るようになっているけれど、今日のお父さんは機嫌が悪いっていう雰囲気じゃなかった。

それは何故か、私を不安にさせた。




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