叶う。 Chapter3
/想い
私は何だか憂鬱な気分で俯いた。
そんな私をにやついて眺めるお父さんは、やっぱり良い人なのか悪い人なのか判断が付け難い。
私がそんな事を考えて居ると、家政婦さんがコーヒーを乗せたお盆を持って私とお父さんの前に丁寧に差し出すと、一礼してまたキッチンに戻っていった。
「心気くせぇ顔すんな。別にとって食ったりしねぇよ。」
「・・・私の事調べたんですか?」
「いーや、聞いたんだ。」
「・・・・誰に?」
一瞬ママに聞いたのかと思ったけれど、ママは今入院中だという事を私は忘れていなかった。
だけれどお父さんは私の質問には答えずに、こう言った。
「この家の庭に、綺麗な黒赤色の薔薇が咲いているんだ。あいつはいつも時間があればそれを見に来ていたよ。あいつはこの家を薔薇の家って呼んでた。」
私はその意味が分からなくて首を傾げた。
「薔薇は色によって花言葉が違う。特に黒赤色の薔薇には色々な意味があるんだ。憎悪、嫉妬とも言われるが、滅びる事のない愛という意味もある。」
お父さんはそう言って、私の瞳を真っ直ぐに見据えた。
「あの男なら、お前はきっと幸せになれるだろうとあいつは言ってた。それをお前に伝えて欲しいともな。」