叶う。 Chapter3
きっと仕事で嫌なことがあったのかもしれない。
私は不安を掻き消すように、そんなことを考えた。
家政婦さんがいつものように食事を運んで来る。
お父さんは相変わらず無言のまま、両手を組んだので私も黙ったままで手を組んで祈った。
今日も家族が幸せであるように。
私は最近、ずっとそう祈りを捧げていた。
「頂きます。」
私はゆっくりと祈りを捧げてから、そう口にした。
だけれど何故かお父さんは食事に手をつける気配がなかった。
手を組んだまま俯いて、額にその手を当ててじっとしている。
時々頭をその手に軽くぶつけるようにしながら、何だか酷く考え込んでいる様子だった。
私は手にスプーンを持ったけれど、そんなお父さんの様子に静かにスプーンをテーブルに戻した。
何だか酷く嫌な予感かする。
そして私の嫌な予感は、悪い時ほど良く当たることを私は知っている。
「どうか・・・したんですか?」
口を閉ざしたままのお父さんに、私は静かにそう言った。
だけれど心臓はバクバクと、嫌な鼓動を刻み続けている。
お父さんは私の言葉にゆっくりと顔を上げたけれど、やっぱり私の方に視線を向けてはくれない。
その仕草が、何故か余計に私の不安を煽った。