叶う。 Chapter3
「・・・・受験を控えているところ、悪いんだが。」
お父さんは静かにそう言うと、やっと私に視線を向けた。
その瞳はすっかりと色褪せて見えて、それだけでもお父さんがとても意気消沈な状態なんだと分かった。
「明日から暫く、学校は休みだ。急用が出来てしまったんでな。」
私はお父さんの言葉に、嫌な予感は予感ではなかったと理解した。
「・・・・どこかに・・行くんですか?」
私はその答えを知りたくなかった。
「・・・・イギリスに。」
お父さんの言葉に、私は身体が震えだしたのが分かった。
だけれどそれがバレないように、私はテーブルの下で拳を固く握り締めた。
心は完全に制御出来ないほど混乱している。
なぜイギリスなのか、理由は明白だ。
問題はなぜ私が一緒に行かなきゃいけないのか。
家族に何かあったんだろうか?
お父さんが私に言うってことは、私が行かなければいけない理由があるからなんだと、私は瞬時に理解した。
そしてお父さんの様子から察するに、私を呼んでいるのは。
双子の父親で間違いはないんだろう。
あの感情の無い蔑んだ瞳を思い出し、私は一瞬にして頭が真っ白になった。