叶う。 Chapter3
そんな私にお父さんは不安気な表情を浮かべた。
一年も一緒に居たのだから、私だってお父さんの傍を離れるのは寂しい。
だけれどこれ以上、お父さんが苦しそうな顔をするのを私は見たくなかった。
だから私はお父さんの瞳をしっかりと見つめると、にっこりと笑ってこう言った。
「ごめんなさいお父さん。私はもう大丈夫です。支度をするので暫く一人にして下さい。」
私の言葉に、お父さんはゆっくりと立ち上がると何も言わずに私をそっと抱き締めてくれた。
その仕草は私の涙腺をとても刺激したけれど、私は泣かなかった。
お父さんはそんな私の頭の天辺にキスをすると、何も言わずに部屋を出て行った。
お父さんが出て行くと、今度は入れ違いで美弥が部屋に入って来た。
「・・・・大丈夫ですか?」
美弥は不安そうにそう言ったけれど、私は黙って頷いた。
「美弥、悪いんだけど私の支度をしてくれる?服とか、そういうのまとめてくれる?」
私は美弥にそれをお願いすると、美弥は頷いてスーツケースを取り出して支度を始めた。
それを確認すると、私は真っ直ぐに自分の机に向かった。
引き出しを開けて、中から以前買ったレターセットを取り出すと慌てて文字を書き出した。
ママの走り書きの置手紙の理由は、こういうことだったんだと何故かそんなことを思い出した。