叶う。 Chapter3
“マジ?この時期に海外とか、かなう大丈夫なの?”
私がこの家に来てから、何度か突然お父さんに連れられて海外に行っていたからか、和也は全く疑ってないようだった。
「うーん、ピアノは出来ないけど勉強は美弥が見てくれるから大丈夫かな?」
“そっか、でも暫く顔見れないの寂しいな。”
「ね、私も寂しいけど。」
ごく普通に会話をする和也に、何故か悲しみが込み上げてきたけれど、私は何とかそれを堪えた。
“何処にどれくらい行くの?”
「あ、まだ聞いてないや。でも多分カナダだと思う。」
私は少しおどけたようにそう嘘を吐いた。
実際にお父さんは仕事でよくカナダに行っていたので、そう言っておいた。
“そっかぁ、マジで寂しいんだけど。仕事なら仕方ないな。”
「その間に浮気しないでね。」
私はそう言って微かに笑い声を上げてみせた。
胸は張り裂けそうなほど苦しかったけれど、今回ばかりは悟られる訳にはいかない。
“俺が浮気すると思うの?かなうこそ、気をつけてね。可愛いんだから、変な男に言い寄られないようにw”
和也はそう言って微かに笑った。
大丈夫、ばれてない。
「私は平気、だって美弥がいるもん。」