叶う。 Chapter3





“美弥さんも美人だからね、ほんとに気をつけて行って来てね。まぁ、寂しくなったら別に連絡とれるしね。”

「・・・うん。和也?」

“うん?”

「・・・大好きだよ。」

“俺も大好きだよ。”


私の頬を涙がすーっと伝ったけれど、私はしっかりとそう伝えられた。

和也の優しい声音はいつもと変わらない。
それが余計に切なくなった。


「じゃあ、そろそろ寝ないと。明日朝一の便で行くみたいだから。」

“マジか、本当急で大変だな、りょーかい。ゆっくり休んでね。”

「うん、和也も無理しないでね。おやすみ。」

“はいよー。おやすみ。”

電話を切ると、途端に涙が溢れて頬を流れ落ちた。

だけれど大丈夫、悟られていない。
そんな私に美弥は黙ってハンカチを差し出してくれた。

そう、泣いてる暇なんかない。


「ねぇ、美弥。」


「・・・何でしょう?」


「お願いがあるの。」


私はそう言って、美弥に先程書いた手紙と封をした日記を手渡した。

「もし・・・私が、その・・・ここに帰って来ることが出来なかったら、これを開けて欲しいの。そしてこの中にある日記を家族に渡してくれる?」

私がそう言うと、美弥は一瞬目を伏せた。

「・・・・分かりました。」

美弥は今まで聞いたことがないくらい、小さな声でそう言った。





< 177 / 240 >

この作品をシェア

pagetop