叶う。 Chapter3



「・・・・・ちょっとお前に見せたい場所がある。一緒に来てくれるか?」


そう言ってお父さんは手を差し出した。
私はそれに頷くと、お父さんの手をぎゅっと握った。

大きくて温かいその手を繋ぐと、お父さんは私を連れて1階へと降りていった。

私はお父さんに手を引かれながら、一体何処に行くんだろうと考えたけれど、廊下を真っ直ぐに進むに連れてその場所がなんとなく分かった気がした。


その場所には相変わらず不気味な甲冑が静かに佇んでいる。
今にも動き出しそうなそれが怖くて、私はこの家にやってきてから一度もその場所には近寄りもしなかった。

だけれどお父さんは甲冑に挟まれた通路を奥へと進んで行く。
薄暗く不気味な甲冑はとても怖かったけれど、私は初めて向かうその場所にほんの少しだけドキドキした。


やがて通路の先に大きな扉が見えてきた。

お父さんの書斎のようなその大きな扉は、綺麗な天使の彫刻が左右両方に彫り込まれていた。

お父さんは鍵を取り出すと、その扉の鍵を開けてゆっくりと扉を開いた。


薄暗いその場所は目を凝らして見ると、どうやら地下へと続く階段になっているようだった。


「足元に気をつけろよ。」


お父さんはそう言って、また私の手を引きながらゆっくりと階段を降りていった。






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