叶う。 Chapter3
階段には所々に小さな照明が点いていたけれど、それでもやっぱり家の中よりも全然暗かった。
幅はお父さんと2人で並んでも、少し余るくらいの余裕がある。
階段はゆるやかな螺旋状になっていて、私は足元を見ながら慎重に降りて行った。
だけれど階段はそんなに長くはなかった。
だからこの場所は地下だけれど、そこまで深くないんだろうと思う。
階段を降りきると目の前にまた扉が現れた。
先程と同じくらいの大きさの扉で、今度は綺麗な薔薇の彫刻が施されていた。
お父さんはさっきと同じように、鍵を取り出して大きな鍵穴にそれを差し込むと、右に回した。
ガチャンと大きな音がして、扉が開錠されたのが私の耳に伝わってきた。
お父さんは私から手を離すと、両手でその扉を開いた。
扉はとても重そうに、ゆっくりと開いていった。
私は扉から差し込む光に、思わず目を閉じた。
ずっと暗がりに居たからか、部屋の中から漏れる光はまるで太陽みたいに眩しかった。
両目をぎゅっと閉じたけれど、微かに水の流れる心地良い音が聴こえてきた気がして、私はそっと少しずつ目を開いた。
あまりの眩しさに何度も瞬きを繰返す。
次第に光に目が慣れ始めると、それは普通の真っ白な蛍光灯の明かりである事に私は気がついた。
そして目の前の光景に、自分の目を疑った。