叶う。 Chapter3
その部屋はとても広く、そして暖かかった。
そして不思議なことに、この家にある庭のように小さな噴水があった。
それは透き通るような水を小さく噴き出している。
微かな水の音は、そこから聞こえて来ていたのだと私は直ぐに気がついた。
そして更に不思議な事に、その部屋には鉢植えに植えられた様々な色の薔薇の花が咲き乱れている。
それは全て本物の花であることが、その香りから直ぐに気がついた。
部屋には真っ白なアップライトピアノと、ベッド、それに小さな机が置かれていた。
そして私は見つけた。
部屋の壁に掛けられた額に入れられた可愛い少女の写真と、真っ白な彫刻が刻まれた石棺のような物を囲むように鉢植えが置かれたその場所を。
鉢植えからはピンクの薔薇が咲き誇っていて、石棺が隠れるようにアーチ状になっている。
私は直ぐにそれが何なのかに気がついた。
「この部屋に、リサはずっといたんだ。」
お父さんは静かにそう言った。
だけれど私は、額に掛けられた小さな女の子の写真から目を離せなかった。
お父さんと同じ、栗色の髪にママに似た瞳をしたその女の子は、はにかんだ笑みを浮かべて微笑んでいた。
お父さんはそんな私の視線に気がついたのか、相変わらず静かな声でこう言った。