叶う。 Chapter3
「だが、俺が死んだらお前と結も俺と同じ墓に入ることになる。俺は跡取りを作る気がないんでな。」
お父さんはそう言って微かに口角を上げた。
確かにお父さんには私が居なくなれば子供も居ないし、双子もきっともうお父さんの籍を抜けているんだろう。
「もうこれ以上繰返してはいけないんだよ。だから俺の代で全て終わりにする。」
お父さんはそう言って、じっと結さんの写真を見つめていた。
私はお父さんの言葉の意味を考えて、それをきちんと理解出来た気がした。
お父さんはもうこんな悪夢みたいなことを、繰返したくないんだと純粋にそう思った。
親から子供へ受け継がれていくその血を、お父さんは絶やす気でいるんだろう。
やっぱりお父さんは優しい人なのだ。
「そろそろ・・・行くか?」
お父さんはそう言って私に視線を向けた。
私は黙って頷くと、お父さんの腕に自分の腕を絡めた。
最後くらい沢山甘えておこうと、思う。
お父さんはそんな私の髪を空いている手で優しく撫でると、その部屋を出た。
途端に暗くなった階段が視界に入ってきたけれど、私はもうその階段すら気にならなくなった。
闇があるから、光が美しいのだと、そんな風に思った。