叶う。 Chapter3
綺麗な深い蒼い瞳。
私はそれを思い出し、心を落ち着けた。
大丈夫、シオンのあの感情のない瞳をしっかりとイメージして私はお父さんを見上げた。
お父さんはまたちらりと私に視線を向けて、その手を私の頭に優しく置くと、小さくこう言った。
「・・・上出来だ。それでいい。」
それから暫くすると、私達は誘導されるまま飛行機を降りた。
初めて降り立ったイギリスという国は、曇り空のせいか何だかすごく肌寒かった。
お父さんは黒いスーツを着ていたけれど、付き人からトレンチコートとカシミアの赤いマフラーを受け取ると、歩きながらそれを羽織った。
私は胸元がレースになっている黒いタイトなワンピースにブーツを履いて、お父さんと同じ色の大判のストールを巻いていたけれど、それでも足元から吹き込む風がとても寒かった。
違う意味で震えている私に、お父さんは空港内にあるお店でストールの代わりに真っ赤なトレンチコートを買ってくれた。
行き交う人々の多さに圧倒されそうになったけれど、お父さんが連れている付き人の多さに皆自然と道を空ける。
空港内はとても広くって活気があり、様々なお店が軒を連ねていたけれど、お父さんはそれだけを買うと私を連れて空港を出た。
そして真っ直ぐ向かったのは空港から少し離れた場所にあるタクシー乗り場の近くだった。