叶う。 Chapter3
お父さんはコーヒーを飲むと、直ぐにソファを立った。
「俺は出掛ける。お前は色々あって疲れてんだろ?夕飯まで昼寝でもしておけ。」
そう言って直ぐに、部屋の隅で直立不動にしていた付人らしき人を連れてリビングを出ていった。
私はこの家のルールやら、聞いた事を忘れないうちにメモしておこうと自分の部屋に向かおうと思ったけれど、せっかく出して貰ったコーヒーに口を着けないのも申し訳なく思った。
なので一口だけ口にしてみたけれど、苦くて思わず吐き出しそうになってしまった。
なんとか無理矢理飲み込んで、今度からは紅茶を頼もうと心に誓った。
私が席を立つと、直ぐに家政婦さんがやって来てテーブルの上を綺麗に片付け始めた。
「あの。」
私は家政婦さんに声を掛けた。
「何でしょう?お嬢様?」
「あの、水とかペットボトルの飲み物ってありますか?部屋に持って行きたいのですが。」
「申し訳ございませんが、ご用意しておりません。部屋にコールボタンがございますので、何か飲み物等が必要になりましたらお呼び下さい。」
「……分かりました。」
私は機械的に喋るこの家政婦さんが、好きになれそうにないと思った。
そして、早速必要な物が出来てしまって何だか酷く面倒な気分になった。