叶う。 Chapter3
だけれど初めて見るイギリスの街並みはとても綺麗で、私はついつい外を眺めてはそちらに興味がいってしまう。
お父さんは見ざる言わざる聞かざるの姿勢を崩さずじっとしていたけれど、私の頭の中は別のことが浮かんできた。
それはこの街に、家族が住んでいるのだということだ。
シオンもあの瞳でこの景色を眺めていたんだろうか。
そんなことが一瞬頭を過ぎったけれど、私は必死にその想像を掻き消した。
それは車が、街から郊外へと向かっていることが何となくその景色から分かったからだった。
さっきまでとは違う人通りの少ない郊外を、車は走り続ける。
私は外の景色を見るのをやめて、真っ直ぐに前だけを見つめた。
そして何も考えないように、難しい楽譜を頭の中で繰り返し思い浮かべていた。
車が進む度に、双子の父親が近づいている。
だけれど同時にママとレオンとシオンも近づいている。
それは何故か私の心を安定に導いてくれた。
会えるのだ。
例え今日死のうとも、私は家族に会えるのだ。
そしてもし私が死んでしまっても、お父さんの秘密の地下室に私は眠ることが出来る。
結さんと一緒に、あの薔薇の咲き乱れる安らかな空間で永遠の眠りにつけるのならば、寂しくはない。
そう思うと私はとても冷静になれた。